2011年06月14日

『ぼくのエリ 200歳の少女』

静かで、心に降り積もって行くようなタイトルロールに、突き刺さるような一言目の台詞。
それだけで、この映画が好きになった。『ぼくのエリ 200歳の少女』(『LAT DEN RATTE KOMMA IN』)

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いじめられっ子の少年と、隣に引っ越して来た謎の少女。
雪深く、シンと張りつめた空気感が、ファンタジーとリアルの境界線を上手く包み込んでぼやかしてくれる。

ヴァンパイアの動き、仕草、声の描き方が面白い。スピード感や、お腹や喉の鳴る音、咆哮の音がとても繊細で、ヴァンパイアという存在に新しいリアリティを生み出していて、心地よかった。

主人公の少年オスカー役のカーデ・ヘーデブラントの透き通るような美しさ、エリ役のリーナ・レアンデションの、目が離せないほど強い野性的な眼差し。二人のシーンはゾクゾクするような儚さと切なさがある。

少年と少女の無垢な世界観と、スプラッターなところのギャップ、温度差が、奇妙に魅力的な、独特の肌触りのある作品。

MORSE〈上〉―モールス (ハヤカワ文庫NV) MORSE〈下〉―モールス (ハヤカワ文庫NV)
MORSE〈上〉―モールス (ハヤカワ文庫NV) MORSE〈下〉―モールス (ハヤカワ文庫NV)
原作は、スウェーデンのスティーブン・キングといわれる、ヨン・アイヴィデ リンドクヴィストの作家デビュー作。映画の脚色も原作者本人が担当。
マジシャン、スタンドアップコメディアンという経歴を持ち、二作目はゾンビが題材だそうで、こちらも面白そうで気になります。

監督・編集は、これが映画デヴュー作となるトーマス・アルフレッドソン。
あらすじを読んでからずっと観たかった作品。どこの国の映画かも知らずに観てましたが、スウェーデン映画でした。

一瞬、何事か?と思った、ぼかしシーンですが、前振り的な台詞があったので、あれは隠したらダメだと思うのですが…。
年齢的な事でNGなのでしょうか? 隠されると、余計に色んな事を想像して考えてしまいました。

ハリウッドリメイク版は、『クローバーフィールド/HAKAISHA』のマット・リーヴス監督、主演が『キック・アス』のクロエ・モレッツ。スティーヴン・キングが「2010年のお気に入り映画ナンバーワン」に選んだそうです。どんな風にリメイクされるのか、楽しみです。



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posted by bakabros at 10:43 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 外国映画

2011年06月09日

『127時間』

ダニー・ボイル監督独特の、ギラギラとした生命力に満ち、躍動感溢れる映像が、この映画のテーマにぴったり。人間の命と、大自然の営みとの戦いを鮮やかに映し出す。
アーロンが何を選択し、どう決断したか。生き抜く為に、彼が『127時間』の間にした事、感じた事、考えた事のひとつひとつが、キリキリと心に迫ってくる。

127時間 - 映画ポスター - 11 x 17 Soundtrack Soundtrack

谷底に挟まれ、身動きが取れないというシチュエーションを、これだけリズミカルに、スピード感を持って、開放的なイメージで描けるのはこの監督ならではでは。

岩肌の滑らかな美しさ、小さな虫たちの息づかい、渡り鳥の羽ばたき。大自然の荘厳さ、脅威の中に放り込まれた人間のか細さと、立ち向かう力強さ。

観ている間、観終わってからも、強く感じたのは、とにかく、アーロン・ラルストンという人の生命力のたくましさ。
絶望的な状況の中にあっても、自分を見失わず、客観的に見られる精神力の強さ。
そして、生き抜く為の決断力。

どんなに生への強い執着があったとしても、彼が実際にした事を、真似出来る人間はそういないのでは。
ただただ、彼の行動力に感心するばかりで、もし自分が同じ状況に陥ったとしても、何もせずに死を待つんだろうな、と自分のふがいなさを見せつけられた気がした。

この映画が特別なのは、主演のジェームズ・フランコの魅力に尽きるのではないでしょうか。
人懐っこくて、儚げな笑顔。洞察力のある真っ直ぐな眼差し。彼の全ての仕草、表情、動きに説得力があり、リアリティがある。

絶望と苦悶の表情がまたたまらない。彼の泣き顔のような笑顔が好きなのです。

アメリカで失神者続出とかいう噂を聞いて、相当ショッキングなシーンを想像していたのですが、思った程ではなくて、ホッとしたような物足りないような。
でも、その後、ラストまでの淡々としたカンジがまたリアルで、後からジワジワと痛みや恐ろしさが襲ってきました。

観ている間、すごく喉が渇いたのだけど、アーロンに悪くてお茶を飲めませんでした。

『スラムドッグ$ミリオネア』で2009年アカデミー賞最優秀作品賞・最優秀監督賞を含む最多8部門受賞したダニー・ボイル監督。
今作では作品賞、主演男優賞、脚色賞、編集賞、作曲賞、主題歌賞の6部門ノミネート。

脚本は『スラムドッグ$ミリオネア』に続きサイモン・ビューフォイ。

アーロン・ラルストン 奇跡の6日間
アーロン・ラルストン 奇跡の6日間
アーロン本人が書いた奇跡の6日間のドキュメンタリー。映画を観て、更にこの出来事の細部を知りたくなりました。


カチンコダニー・ボイル監督作品のエントリ
『スラムドッグ$ミリオネア』
『サンシャイン2057』

カチンコジェームズ・フランコ出演作品のエントリ
『トリスタンとイゾルデ』

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posted by bakabros at 22:35 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(25) | 外国映画

2011年06月03日

『奇跡』

子供の頃から、大人になるまで、一体いくつの奇跡を信じてきただろう。
奇跡を信じて、叶わず、諦める度に、少しずつおとなになっていったんだなぁ。
映画を観ながら、ジワジワと、自分の子供時代を思い起こす。
強い想いは、いつか何かを変えるかもしれない、と思わせてくれる、『奇跡』

奇跡 くるりの歌う主題歌『奇跡』

子供が「大人になる瞬間」は、切なくて、頼もしくて。
遥かに開ける未来への道を予感させてくれる。
自分もまだまだ、「今」を生きなければ、と新鮮な気持ちを貰った。

是枝監督の描く子どもたちは、とてもクールで、落ち着いていて、大人が思っている「子ども」よりも、ずっと大人びていて、たくましい。
そして、時々、演技をしていないんじゃないか、と思わせる瞬間の表情がたまらなくいい。
台詞が自然と重なり合うところも好きなんだけど、今回は方言のせいか、少し聞き取りづらいところがあったかな。

主演のまえだまえだ兄弟、オダギリジョーさん、大塚寧々さん、樹木希林さん、橋爪功さんといったキャスティングも良かったです。
本木雅弘さんと内田也哉子さんの長女で、樹木希林さんの孫に当たる内田伽羅さんも出演されています。

JR九州新幹線開業のCMもステキですね。合わせて見ると映画の感慨が蘇ります。

カチンコ是枝監督作品の感想エントリ
『空気人形』
『歩いても 歩いても』

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posted by bakabros at 10:00 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(19) | 日本映画