家族だからこそ見栄を張り、ちょっとした嘘をつく。長年のわだかまりやそれぞれの関係が、言葉のやりとりの端々からにじみ出てきて、羨ましくて切なくなる、ある家族の一日の出来事。
『歩いても 歩いても』
どこにいても、家族誰かの話し声がどこからか聞こえてくる、昔ながらの日本家屋。
風通しが良くて、涼しそうで、虫が多そうで。プライバシーはないけれど、田舎の良さをしみじみ感じさせてくれ、ホッとさせられる家。
親にとって、いくつになっても気になるのは子供のこと。亡くした子供のこと。
老後についての親、子供夫婦、それぞれの思惑。老後といいつつ、もう今がその時であること。いつか、近いうちに、でなく、今、親孝行しなければ。
人生は、いつも本当に、少しだけ間に合わない。
この映画は、是枝裕和監督が自分の母親に対して「何もしてやれなかったなぁ」という、後悔の想いから出発しているそうです。是枝監督の願い通り、映画の中には、観る人それぞれの母親が、生き生きと動き回り、いつまでもそこに生き続けてくれることだと思います。
楽しげに冗談をいい、ちょくちょく愚痴をこぼしている。
ふとしたときに思い出すのは、くだらないことを言い合っているときの、いつもの笑顔。
監督だけでなく、全ての母親の思い出が詰まっているような映画でした。
歩いても歩いても原作本
今回も是枝監督は監督・原作・脚本・編集四役こなしていますが、男性が書いた台詞とは思えないほどイキイキとしてリアルな母娘の会話にはびっくりしました。
原作も是枝監督なのですが、樹木希林演じる母親と、YOU演じる嫁いだ娘の会話が、なんであんなにリアルに描けるんだろう!? YOUさんの台詞にはアドリブもあったそうですが、どこからどこまでがアドリブなのか、シナリオを読みながらじっくりもう一度観てみたいです。
樹木希林さんは勿論、他のキャスティングも素晴らしく、家族の中でいつも居場所のない父親役の原田芳雄さんもとても良かったです。
すごいと思ったのは、台詞が幾重にも重なっていて、その会話同士がとても自然であること。みんなが色んな話を同時にしていることが、現実には当たり前なんだけど、映画でこれをするのは、とても珍しいことだと思います。それがすごくリアルで、自分の実家に帰省したみたいな気分になって、観ていてどんどんリラックスしていきました。
是枝監督の映画には、独特の空気感がありますね。
『誰も知らない』のときも、子供たちの瞳の色、特に人の話を聴いている時の目の輝きがとても印象的だったのですが、今回も阿部寛さん演じる良多の再婚相手、ゆかり(夏川結衣さん)の連れ子あつし役の田中祥平さんが大人の会話を聴いている表情だけを切り取ったシーンにはドキッとさせられました。
皆のために母親が作る得意料理の数々が、本当においしそうで、マネしてみたくなりました。とうもろこしのかき揚げとか、枝豆とみょうがの混ぜ寿司とか。
料理を作る「音」の記憶、その料理を作る時に必ずするお決まりの会話があったりして。自分の家族を思い浮かべ、家に帰りたくなっちゃいます。
映画「歩いても 歩いても」サウンドトラック
劇中、ゴンチチの曲がとても心地よく心に響いてきます。映画にぴったりで、いつまでもいつまでも聴いていたくなる曲。サントラ買っちゃいました。
以前から、時々訪問させて頂いています。
(読み逃げでしたが・・・)
今日の更新を見てめちゃめちゃ応援したくなりました!!
がんばってください!!!!
お元気ですか?
大変お久しぶりです。
今年はあまり映画観てないのですが、これ、シアトル国際映画祭で上映され観て来ました。
私には見てる時より後で考えた映画でした。
こんにちは♪ お久しぶりです。
ひとみさんも観られたんですね。
この映画、後を引くというか、後に残りますよね。
ゴンチチの音楽もとても良かったです。