2006年04月17日

『ぼくを葬る』

「ぼくを葬(おく)る」(原題 LE TEMPS QUI RESTE 英題 TIME TO LEAVE)試写。
フリガナがいる邦題ってどうなんでしょう? でもニュアンスはよく伝わります。

余命三ヶ月と告知された31歳のフォトグラファーが、自らの死と向き合い、それをどう受け止めて最期の時を迎えるのか。とても興味深く観ました。

フランソワ・オゾン監督の死を描く三部作、愛する者の死を描いた「まぼろし」に続く2作目では、自らをおくる、自分自身の死が描かれます。
主演のロマン役、メルヴィル・プポーは美しいだけでなく、怒りや焦燥感、諦めや孤独を、ぎらつきながらも愁いを湛えた瞳で強く訴えかけてきて、その存在感に圧倒されます。

ジャンヌ・モロー演じる、ロマンの祖母との会話、2人が過ごす時間がとても印象的です。
あとはロマンと共に、死を見つめる静かな時を追体験していきます。

exclamation映画の結末に触れていますので、鑑賞後に読まれる事をお勧めしますexclamation

timetoleave.jpg治る事のない病に冒されていても、彼はまだとても若く、生きる欲望に満ちあふれています。
恋人に別れを告げ、家族には真実を告げられず、たった1人で死を見つめ、その時を待つ。
その孤独さに胸がつまります。
とてもあっけなく、だからこそ深い悲しみと生命の力強さを逆に感じさせ、死に行く事への希望を残すエンディング。

それまでに彼がした事の全てに共感しながらも、「もし自分なら」と考えてみる。
映画の中の主人公、ロマンという役柄の死に様を追っていくうちに、その人それぞれの生き方があるように、その人1人1人の死に方があって当然なのだと思えました。

最期の時に、病院のベッドで家族に見守られて逝く必要はないのだ。
死んでいく時も、人はたったひとりなのだから、と。

生への執着と性への渇望、それが強く激しいほど、死の影が色濃く浮かび上がる。
主人公が死を意識するようになってから、子供時代の自分の幻影が頻繁に現れるようになります。
なぜ少年時代なのか? 一番生きる力に溢れていた時なのかもしれません。
鮮明に振り返る子供時代は、とても眩しく、哀しいけれど、ついにその少年時代の自分自身とバトンを渡し合い、彼は初めて死んでいく希望を見出せたように思えました。

海、草の生える砂浜で、潮の満ち引きのように、太陽の満ち欠けと共に土へと還っていく時間の永遠に、死も生の一部であって、そんなに恐い事じゃないよ、と思わせてくれる、魂が透き通っていくような映画でした。


ぼくを葬る
ぼくを葬る
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おすすめ度の平均: 5.0
5 フランス映画
5 美しすぎるラストシーン
5 死とまっすぐ向きあう



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愛する人の喪失を描いた、死を描く三部作の第一作。

多彩な上質の作品を次々と生み出すフランソワ・オゾン監督はまだ39歳! 
「海を飛ぶ夢」アレハンドロ・アメナーバル監督が33歳で安楽死というとても難しいテーマを堂々と描ききったように、死を真正面から深く見つめ、その答えを極上の映像にして表現してくれる、その才能に感嘆します。

フランソワ・オゾン DVD-BOX フランソワ・オゾン DVD-BOX
フランソワ・オゾン監督「まぼろし」以前の作品のBOX化。『海を見る』『サマードレス』『ベッドタイム・ストーリーズ』『クリミナル・ラヴァーズ』『アクション、ヴェリテ』他、全9作品を収録。



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posted by bakabros at 14:37 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(5) | 外国映画
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