こういう画面の切り取り方は今までに観た事がなかった気がします。
監督・脚本は、批評家・マスコミに「ウェス・アンダーソン×ウディ・アレンだ!」と言わしめた、ノア・バームバック。『ライフ・アクアティック』でウェス・アンダーソン監督と共同脚本を手がけています。


イカとクジラ
The Squid And the Whale: The Shooting Script (Newmarket Shooting Script)
ヘンテコだけれど楽しげに見える、ある家族の曰常が、両親の離婚話から少しずつ狂い始める。
妻から別れを切り出されても、まだ未練たらたらで落ち目の小説家である父親バーナードと、マスコミにも注目される新鋭作家の母親ジョーン。
そんな両親が離婚して、それぞれー人親となった途端、子供への接し方や態度がー変する様子がなんともリアルで面白かったです。
急に男・女として接するようになるのが、イタイほどに現実的。
不安な気持ちをストレートに表に現せなくても、異性に、酒に、と少しずつ混乱し変化して行く息子たちの心情が痛いほど伝わってきて、全体的にはユーモラスな展開にも関らず、キリキリチクチク身につまされていきます。普通の日常の中の毒や鬱屈した想いが、淡々と描かれて行く様は、劇中にしばしば作家・小説・映画・ロックからの引用があるように、まるで抽象絵画か先新鋭の音楽のように暗喩的。

この物語は、両親ともに作家だった監督自身の少年時代からインスピレーションを得たそうですが、父親役のジェフ・ダニエルズに監督の父親の服を着せたという程、このストーリーと映画は、監督にとって私的なものだったのでしょう。
だからこそ、ヘンテコながらも発する力強さみたいなものを感じるのだと思います。
次回作、全く違った作品を撮ったものが、一体どんな映画になるのか、とても楽しみです。
弟のフランク役は、俳優ケヴィン・クラインとフィービー・ケイツの息子、オーウェン・クラインが。少年のあどけなさギリギリの、揺れる瞬間を真っすぐに体現してみせた演技は立派で素晴らしかったです。
兄のウォルト役には『ウェス・クレイヴン's カースド』のジェス・アイゼンバーグ。
父親バーナードにジェフ・ダニエルズ、母親ジョーンにはローラ・リニー。演技力と脚本のリアルさが相まって、凄い説得力のある両親役でした。
兄弟のテニスコーチ役には、すっかりおっさん化したウィリアム・ボールドウィン。以前ファンだったのですが、にやけたただのおっさんになっていてちょっとがっかりしました(^_^;)

ウェス・アンダーソン監督作品。

ノア・バームバックとウェス・アンダーソンの共同脚本作品。
ウィリアム・ボールドウィンは、立派な「俗物」っぷりが、
父親との対比でよかったと思います☆
へらへらしてましてよねーw
ウィリアム・ボールドウィンはにやけたところがまた魅力と思いますが、それにしても凄いにやけっぷりでしたね(^^) テニスコーチなのにお腹の辺りがだぶついている気が……(^▽^;) 母親の恋人だったら嫌だなぁと本気で思ってしまいました。
かなり重いテーマなのに、それを軽いタッチで描けるのは才能ですかねぇ。
なんだかちょっと尻切れトンボな終わり方でしたが、好きな作品でした。
淡々と登場人物たちを見つめる眼差し、切り取り方に独特のものを感じました。
壊れかけて行く途中にスポットを当てたところも面白かったです。次回作が楽しみな作品ですね(^^)