
エチオピア系ユダヤ人たちがスーダンの難民キャンプからイスラエルを目指し旅立った“モーゼ作戦”の真実を元に、母親と生き別れた1人の少年の成長を通して描かれる壮大な人間叙情詩。
この映画の面白くて凄いところは、「モーゼ作戦」でイスラエルへ渡ったエチオピアのユダヤ人を描いているのではなくて、そのどさくさに紛れ込み、生き残る為にユダヤ人になりすました、エチオピア人少年が主人公というところだと思います。
イスラエルへ渡ったあとも、自分のアイデンティティの消失と、残して来た母への想いに苦しみ悩みながら、成長して行く姿を追って行くのですが、その描かれ方は生き生きとして、生きる事の辛さと同時に、素晴らしさをも教えてくれます。

複雑に絡み合う国と宗教と大人たちの思惑の中で、じっと耐える事で生きながらえている無力さ、生きて行く為に自分を偽り続ける事の辛さがひしひしと伝わって来ます。
前半の重なり合った運命の無情に、こちらの心も冷え、諦めの思いも感じますが、後半、幸せな家族に囲まれて、少年が穏やかに成長し、恋もして未来への夢を語るようになってからは、希望を感じ、世界が明るく開かれたような気持ちになりました。

不幸の逃げ道として信仰が成り立ってしまっている事、そこに行けば全ての苦から解放され、幸せになれるという楽園思想には恐ろしさも感じます。
エルサレムを、約束された「この世の天国・楽園」と本気で信じているエチオピア系ユダヤ人たちの、「エルサレムに行けば肌が白くなり、白人になれる」というセリフに衝撃を受けました。
ただ、この映画では、信仰の裏側に必ず存在する、差別や対立意識、盲信といった事についても強く訴えかけてきます。でも決して説教臭くなく、とてもわかりやすく説明してくれるので、難しい問題ながら、すっと映画の中に入って行けました。
映画を観る前にラデュ・ミヘイレアニュ監督のお話を聞けました。監督は想像よりもずっと若くて、とても気さくな感じ。笑顔が温かい素敵な方でした。短い時間でしたが、母親が与えてくれる愛の素晴らしさを強く訴えられていて、もっともっと話したかった様子。「絶望的な社会」「暗黒的で、あまりに退廃的な世界」と今の世の中を憂いていて「女性はよりよい文明を発展させることができるのではないか、世界をより良くするためのキーパーソンは女性ではないのか」と思っているのだとか。
この映画にも、主人公に愛情を注ぐ4人の女性たちが出て来ますが、彼女たちは監督自身が女性たちに感じている希望の象徴なのだそうです。

少年時代のシェロモ役、モシェ・アベベは「モーセ作戦」で祖父や叔父、叔母がイスラエルに渡り、1991年の「ソロモン作戦」で家族揃ってイスラエルに移住。
青年時代役のシラク・M・サバハは、エチオピア系ユダヤ人。10歳の時にイスラエルへの移住を求めて家族と数千キロの道のりを歩き、首都で5ヶ月待った末、「ソロモン作戦」によってイスラエルへ。
幼年時代役のモシェ・アガザイは、テルアビブ郊外レホヴォ出身で、『シュレック』のロバ、『スターウォーズ』のスカイウォーカー、『ET』のETなどの声優としても活躍しているという芸達者なプロフィールにびっくり(⌒▽⌒;) !
義母ヤエル役のヤエル・アベカシス、義父ヨラム役のロシュディ・ゼムと、それ以外の俳優陣も、皆素晴らしく良かったと思います。

『約束の旅路』についてブログに書き込んだエントリ1つに対して、シネマカフェ運営会社「株式会社カフェグルーヴ」より、アンジェリーナ・ジョリーが親善大使を務めるUNHCR駐日事務所アフリカキャンペーンに50円の寄付を行ってくれます。
記事を書かなくても、バナーや予告編を掲載するだけでも募金の対象となるので、とても参加しやすくて、意義のあるキャンペーンだと思います。
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