アルゼンチンババア 〜みつこの夏〜映画『アルゼンチンババア』のナビゲートDVD。堀北真希さんのナレーションによるメイキング映像、顔合わせからお祓いの模様まで(! )密着した撮影現場ビデオレポートなど収録。
母の死を一人で真っすぐに見つめ受け止めようと努力している娘・みつこと、妻の死から逃げ出してしまった父・悟。悟は、風変わりな嫌われ者の老婆、アルゼンチンババアによって自分が救われたと開き直りますが、現世に娘を一人きりにして、知らんぷりしていてはいけません。
そんな悟とみつこ、悟の妹とその息子といった人々の関係を、全てくるめて引き受けて、面倒みてしまう、アルゼンチンババア=ユリの温かさは、まるでスペインの太陽か皆の母親のように観客までを虜にして包み込んで行きます。
蜂の巣箱から蜂蜜を取り、スペインの遺跡のような建物の屋上で野菜を育て、ゆったり生き生きと自分の思うがままに暮らすアルゼンチンババアは、臭い匂いさえなければ、とても魅力的な人物。子供が妄想する魔女そのもののような風貌と生活に、次第に興味を惹かれて行き、誰もがすっかり骨抜きにされてしまいます。
悟とみつこ、親子の旅。思いの丈を、軽トラの荷台に寄りかかりながら淡々と語り合うシーン。このシーンが一番好きでした。おとぎ話と空想と、現実的な日々の暮らし。それらが上手く合わさって、不思議にリアルな空気を醸し出しています。
この現実感と、お話の中の出来事のようなアルゼンチンババアのストーリーをリアルに表現するのは、とても難しいことだと思います。
それを可能にしたのは、堀北真希、役所広司、鈴木京香という三人のキャスティング。特に堀北真希さんの演技、佇まいの見事さに衝撃を受けました.多くのシーンで首にギプスをはめている姿で登場しますが、むち打ちギプス姿で、巨大な石を引き歩く様子がギャグに見えないなんて! おかしさを通り越して、それが自然に見えるというのは凄い事だと思いました。
可愛いだけじゃない、彼女の凄い底力を感じた映画でした。
みつこの従兄弟、森下愛子の息子・信一役の小林裕吉さんの演技がまた凄いです。こちらの想像以上、予期せぬほどに自然な演技には何度もドキッとさせられました。これからの活躍がとても楽しみな俳優さん。

アルゼンチンババア 単行本 アルゼンチンババア ハードカバー
映画のタイトルバックでも使われている、奈良 美智さんの絵が可愛くて、この作品の魅力を更に増しています。毒のある可愛らしさは原作者のよしもとばななさんの作品とも通じるところがあるような気がします。
タテタカコさんの歌う主題歌『ワスレナグサ』


