恋愛小説という形をとりながら、現代社会の色々な問題点と、誰もが持つ心の葛藤をえぐり出し、それぞれの抱える問題が綴られていきます。
表現が多少オーバーな気はしますが、でも本当に今の世の中は、こんなにも壊れているかもしれない、と恐ろしくなるような映画。『素粒子』
素粒子 ドイツでセンセーションを巻き起こしたミシェル・ウエルベックのベストセラー小説。映画の原作本です。映画の前にオスカー・レーラー監督のビデオレターが上映されました。
現代の消費社会に強い脅威を感じていて、この映画では現代に生きる人々の心の空虚感、焦燥感みたいなものを捉えたかったようでした。『約束の旅路』のラデュ・ミヘイレアニュ監督と同じく、今の世の中に絶望しているような印象を受けました。「日々生きて行くだけでも大変なストレスのある時代」というような事を仰っていたのがとても印象的。
一見普通に見えるけれど、なかなかショッキングでぶっ飛んだ内容と、予想を超える展開に、観る側のスタンスを問いかけられるような作品でした。彼等の問題や映画の中で描かれることは、今の自分たちの裏側の顔であって、そうやってみんな生きているんだと教えられるような。観ている間はヒリヒリととても窮屈な気分を感じましたが、それは自分の本心や本能をあぶり出されるような気がするからかもしれません。
ひとつ気になったのは、クローン技術の研究に没頭する弟が、自分の子供を持つという事態に対して、どう思ってどう考えたのかが全く描かれていなかったこと。
それがわかってこないと、結局彼の研究へのモチベーションが見えてこない気がしました。その辺りが凄く面白いところだと思うのですが。
*「素粒子」とは?
物理学用語のひとつ。物質の構造を分子・原子・原子核と分けて見たとき、原子核の次に来る粒子をいう。物質の最小単位とされている。

アグネスと彼の兄弟
モーリッツ・ブライブトロイ出演、オスカー・レーラー監督の前作。性転換して女性になったクラブダンサーのアグネスと彼の二人の兄弟、父親をめぐる物語。
日本では劇場未公開でしたが、4/7にDVDが発売されます。こちらも面白そうで気になる映画です。

どこかで見た顔、『es[エス]』の主人公と似てるなぁと思ったら、やはり彼でした。今回、おじさんっぽくなっていてちょっとびっくり。『ミュンヘン』にも出ていたんですね。
モーリッツ・ブライブトロイとフランカ・ポテンテは、『ラン・ローラ・ラン』以来の再共演。
『ミュンヘン』『ボーン・スプレマシー』




兄が子どもにミルク飲ませる際、
睡眠薬を混ぜる場面があったので、
たしかに弟クンのほうもあって良かったかも。
原作は読んでいないのでわかりませんが、弟がクローンの研究をしているのは、女性に対する恐怖とか嫌悪とか、負の気持ちがあったからだと思うのですが、実際自分が子供を持つ事に対してどう感じたのか、そこのところが観たかった気がします。
兄の子供への対し方も、恐ろしいものがありましたね。