この人、現代劇には出られないのね、くらいの興味しかなかったのだけれど、リドリー・スコット監督と知って、じゃあ観なければという事に。



キングダム・オブ・ヘブン
キングダム・オブ・ヘブン (2枚組 プレミアム)
キングダム・オブ・ヘブン ディレクターズ・カット
ストーリー:鍛冶屋のバリアンが突然現れた父親(リーアム・ニーソン)に促され、十字軍と共にエルサレムまでの旅をし、父の意志を継ぎ天国の王国"キングダム・オブ・ヘブン"を現実の物にするべく理想郷を追い求め闘い続ける。

歴史を知らないので、どこまでが事実に基づいているのか、全くのフィクションなのかよくわからない。
歴史をよく知っていたり、好きな人なら大層楽しめるのだろうなあ、とずっと思っていた。
ストーリーは、キリスト教対イスラム教のエルサレムを争う闘いなので、どうしても現実の宗教戦争に思いが及ぶ。
しかし、理想郷などの描き方と思想が曖昧な事もあり、あくまでも映画の中の事として観ていたが、終盤ではっきりと主人公にこの戦争の意味と無意味さ、何のために闘うのか、殺し合うのか、その理由と未来に向けてのメッセージを語らせる。
このセリフは、映画の中のものでも、そのまま監督のメッセージとして受け取った。その思いを受け取るために、2時間30分近く血生臭い闘いを見せられたのかと思うと何とも言えない気分になる。
"戦いではなく平和、憎しみではなく愛"が満ちあふれた理想の世界"キングダム・オブ・ヘブン"。
この映画を観てバリアンの意志を継ぐものが現れるだろうか。
この映画が”娯楽”大作として終わってしまう事が一番恐ろしい事だと思う。

初めのうちは、まだヒヨっ子という事で、きっと成長して最後には騎士として、王として相応しい顔つきになり、仕草とオーラになるのだろう、と期待して観ていたが、最後まで一本調子で、初めに出てきたオーランド・ブルームのままだった。
という事なので、会場の2/3以上は居たであろうと思われる、「ロード・オブ・ザ・リング」のレゴラス役、オーランド・ブルームファンの女の子達の基本的な期待、「オーリーの美しい顔が見られればそれでいい」(と観る前に本当にそのまま女の子が言っていた)にはまあ何とか応えられた模様。
見終わって、「まあ、オーランドは格好良かったね。まあね」と言っていたので。("まあ"、と言う所がこの映画をよく表している)
闘いのシーンの細部まで見せてくれるリアルさ、迫力はもの凄い。
城壁を挟んでの攻防はとても細かく徹底したリアルさで、今まで観た戦争映画の中でも一番面白かったかもしれない。
ただ、ハイスピードカメラの映像が観づらくてたまらない。
チカチカして目が追いつかない。途中から無理して目で追う事を止めた。
戦闘シーンではみんな鼻やアゴまで鎧カブトを被るので、目しか見えないので誰が誰やら。
ああ、これきっと前に出てきた誰かなんだろうな、と推測するしか出来ない。
あのハイスピードカメラ、ストップモーションを美しく見せる為の物らしいけれど、普通のスピードで見せる時にも、美しい映像で見せられるような技術が早く開発されないのだろうか?
撮ってる人、あの画面ちゃんと見えてるのかな?
ストップモーションの為だけにやってるとしたら、それ以外の映像を犠牲にしている、そこまでする利点が本当にあるのだろうか??
キャストでは、リーアム・ニーソンとジェレミー・アイアンズと共にもの凄く地味で渋い役、演技を魅せてくれるのがエドワード・ノートン。

驚いたけれど、エドワード・ノートン以外の役者だったら、余計にハラハラしたと思う。いつ顔が出るのか、出ないのか!? と。
エドワード・ノートンなら、最後まで顔出し無しでもあり得るなと納得してしまう。目だけで(しかも見えづらい)、マスク越しの声だけの演技って凄い!
でも、仕草やオーラは素晴らしくエルサレムの王のもの。
オーリーよりも脇の役者が皆素晴らしく、とても光っていた。