
ヨーローッパで圧倒的な人気を誇り、『パリ・ジュテーム』に日本人として唯一参加し、ジュリエット・ビノシュ、ウィレム・デフォーを演出した諏訪敦彦監督の4年ぶりの長編最新作。
諏訪敦彦監督の作品を観るのは初めて。日仏合作映画ですが、オールフランスロケ、全編フランス語で、「フランス映画」に持つイメージそのままのようなフランス映画でした。

始まりのホテルでの会話でも、二人で居ることのぎこちなさが、些細な言葉と動きで表現され、その痛みが伝わってきて観ているこちらまで辛くなってくる程です。
そのリアルな空気感は、完成された脚本を使わず、キャスト・スタッフとのディスカッションから映像を紡ぎあげるという諏訪監督の独特の演出方法からきているようです。
台詞がリアルといっても、映画全体からみると沈黙の場面の方がずっと多いかもしれません。そんな沈黙の中、交わされる会話・言葉の1つ1つがとてもリアルで、真意をつくものである為に、沈黙と台詞の両方がお互いを引き立て合って効いてくる。
この映像体験は独特のものがありました。息詰るようなマリーとニコラの関係を、観ている方も一緒に味わって、覗き見しているような感覚。

そして、リアルだった台詞についても、監督にとっては“触媒のようなもの”で、台詞の意味よりは“音響”として受け取り、1つの素材に過ぎないと考えているのだそうです。歩き方やせきばらい、服のしわと同じくらい重要だけれど、それ以下でもそれ以上でもないという事でしょうか。
そんな監督の考え方と、脚本を使わないという演出方法だからこそ、このようにひたひたと心の内側に押し寄せてくるような、映画自体が呼吸しているような作品になったのかなと思いました。
諏訪敦彦監督の『H Story』に続き、撮影/アーティスティック・ディレクションのキャロリーヌ・シャンプティエが、ほとんど共同演出に近い仕事をしていたというのも、この映画の魅力の源にあるのかもしれません。
マリー役は『ミュンヘン』『ぼくを葬る(おくる)』『明日へのチケット』のヴァレリア・ブルーニ・テデスキ。
ニコラ役には『恋ごころ』、『スパイ・バウンド』のブリュノ・トデスキーニ。
共演にナタリー・ブトゥフー、ジョアンナ・プレイス、ジャック・ドワイヨン、アレックス・デスカス。
一見ストーリーと関係ないように見えるシーンでも、目を引きつけて離さない、主演の二人が持つ雰囲気もとても良かったです。
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