「バットマン」シリーズは、第一作の「バットマン」は結構好きだけれど、「バットマン・リターンズ」「バットマン・フォーエバー」は確かTV放映で鑑賞、「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲」は観ていない。
「バットマン」「バットマン・リターンズ」は、ティム・バートン監督の描く霧雨に煙る鬱蒼とした薄暗いゴッサムシティの街の描き方、クールな映像にしびれた。
でも、プリンスの音楽がどうにもポップでキャッチー過ぎてしまい、画面の重さが半減していたような気もする。プリンスは大好きだけど。
そして今日観た「バットマン ビギンズ」。
徹底してストイックでクールなダークヒーロー像を描ききっている。
その終始格好良すぎる映像の間に挟まれるジョークや笑う場面に観客も、笑うタイミングを逃したまま終盤へ。
とにかくクールに、そして“恐怖とは?”、”怒りと悲しみを克服し、恐怖の中に入っていく”、“恐怖と一体になり、己が恐怖となる”といった哲学的な問答をブルース・ウェイン(クリスチャン・ベイル)、影の軍団のデュカード(リーアム・ニーソン)が延々としている。
ヒマラヤの奥地でする修行が忍者修行? 細かい所はどれもこれも胡散臭い。その頭領が渡辺謙という事だが、まあ思った通りの役所で、ハリウッド映画の日本人出演にはよくある事だが、大した役ではなかった。出番が少ないとは聞いていたが、本当に思ったよりも少ない。彼の出演は日本の興行収益の為ではないかと思う程。だから渡辺謙を期待して観に行く事とがっかりするだろう。
前半はそう言った感じなので、一体どうなるのかと思ったが、ブルース・ウェインが自分の成すべき事を見定め、バットマンとなりつつある時、それ以降、モーガン・フリーマンが武器や車を出してくる辺りから楽しくなってくる。
そして、あのマスク。
「耳は別注文で中国に」とか、コウモリ型の手裏剣を電ノコで(!?)作り始めたりする辺りから俄然面白くなってくる。
キャットウーマンのように自分でチクチク縫ったりはしないけれど、スーツを黒スプレーで塗装している場面なんてもうウププと笑いがこみ上げてくる。
ああいう漫画っぽい事が好きな人なら凄く楽しめると思う。
隠れ蓑にマスクを1万個注文とか、大金持ちが金を湯水のように使って、しかし自分の身体一つでゴッサムシティを悪から守ろうとする。
その大元のストーリーが面白いと思える人はきっと楽しめる。
そして、今までのシリーズのコミカルなキャラクターなどについていけなかった私は、「バットマン」よりも本作の方が純粋に面白く楽しめた。
ブルース・ウェインと執事(マイケル・ケイン)との絆とか、ゲイリー・オールドマンが善意の警官(!? で彼とわかっていても彼に見えないとても普通の良い役を普通に演じている)とか、エンドロールでルトガー・ハウアーの名前に気づいて、その役名を見ても彼だったとは思い出せなかったりとか、そういった味のあるベテラン俳優陣の使い方に贅沢さを感じ、この映画を監督がどういう作品にしたかったのかが伝わってくる。
主演のクリスチャン・ベイルは、記者会見での発言が非常に印象悪かったので、鑑賞前に余計なイメージを持ってみる事になってしまった。しかし、さすがに言うだけの事はある。この人のどの映画を観ても、彼自身の顔が見えてこないというか、どういう人なのか全く尻尾を見せないと言うか、それだけ役柄に入り込んで溶け込んでしまっているのかもしれない。
モーガン・フリーマンのように、出て来るだけで“モーガン・フリーマン”! 彼以外の何者にも見えない、映画としてはマイナスになるような俳優とは全く逆の俳優だと思った。
今までのバットマンシリーズファンやアメコミ映画ファンよりも、普通の映画好きな人の方が逆に面白いと思えるのかもしれない。
それ位、今回のバットマンは、ブルース・ウェインの、己の生い立ちや背負った苦しみ、悲しみや怒り、宿命との葛藤がメインの人間ドラマになっている。
熱狂的なバットマンファンやアメコミ映画ファンに、是非感想を聞いてみたい。
プリンス
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こちらこそ、TBありがとうございます。
また覗いてやって下さい。