SABU監督作品。原作 重松清『疾走』。
昔は海だった地を干拓し、田んぼを作り集落を作っていった新しい住民達を“沖”と呼び差別する“浜”の人々。
地域の差別、学校でのいじめ、開拓と地上げ、身近な者たちの死。
それら全てが絡み合い子供達へ押し寄せる。
親に見捨てられ、行き場を失い、“沖”に出来た教会と、過去を背負った神父にすがる。
ただ、今の状況に順応しながら生きてきたが、その歯車は段々と音を立ててきしみ始め、崩壊寸前ギリギリのところまで追いつめられて行く。
角川映画「疾走」オリジナル・サウンドトラック干拓の田んぼを飛ぶように疾走する軽トラ。
田んぼのあぜ道の、視界の良い、見渡す限り田んぼだけの道なのに、スピードを出しているだけでもの凄く恐い。
軽トラも、ダンプカーも、車高が高く見えるのは、田んぼの中、道路の下から見上げる視点のせいなのか。そのせいで余計に緑の上を飛んでいるように見える。
エリ役の韓英恵の走る姿も、同じ様に普通ではないスピード感を感じる。
このスピード感はSABU監督のものなのだと思った。

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演劇的というのか、学芸会のようなセリフ回しは、SABU監督の演出なのか?
原作を未読なのでわからないが、小説のままのセリフが多かったのかもしれない。
そのまま読むと違和感のあるセリフを、ただ喋っているような場面は少し辛かった。
そんなセリフ回しがずっと続く中、ただ一人関西弁で気を吐く中谷美紀が光っていた。
設定やストーリー展開、ジャニーズの手越祐也主演ということで、二宮和也主演の『青の炎』と似たような印象。
映画が中途半端な感じだったので、逆に原作を読んでみたくなった。






これ、意外なほど、原作のセリフに忠実なんですよ。SABU監督、いつも自分の脚本だから、今回は、原作者を尊重したんですかね。
やはり、原作の台詞に忠実だったんですね。
書き言葉をそのままセリフにすると、どうしても少し違和感があるような気がします。
独特の疾走感に、もう一度観てみたいと思わせる映画でした。
私は重松清さんの作品は映画でしかまだ観ていないのですが、皆さんの感想を聞くと、小説にもますます興味がわきました。
映画のラスト、どんなだったでしょうか。
原作のままの台詞だったらしいので、ラストを小説と映画で比較して観るのも面白そうですね。
小説を読んでみてから、また映画を観てみたくなりました。