2005年08月25日

「クレールの刺繍」

image_20.jpgヤマハホール「クレールの刺繍」試写会。
霜の降りたような土のアップから始まる。

寡黙に打ち沈んだ女性2人が刺繍によって再生していく姿を、陰影深い絵画のような映像の中、ひと針ひと針ビーズを刺繍していくように丁寧に描き出していく。

この映画の持つ質感、空気感に引き込まれ、心地の良い時間を過ごす。
    
17歳のクレールは妊娠5ヶ月になっても誰にも相談出来ずに、“匿名出産”を決心する。
大好きな刺繍の腕を活かして、オートクチュールの刺繍職人であるメリキアン婦人のアトリエで働く事になる。
一人息子を亡くしたばかりのメリキアン婦人と、出産という未知の世界と向き合わざるをえないクレール。
不器用で言葉少なな二人は、刺繍のひと針ひと針を通して会話し、向き合って行く。


フランスの片田舎、煉瓦の家々の町並み、緑深い森や霧に霞むスモーキーブルーの湖
冷たい風や、雨の前の湿り気を含んだ空気感、キャベツ畑の土の匂い画面から匂い立つような、本物の空気をまとった風景。

自然の中で、ゆったりとして落ち着いた、でも正確な時間が流れていく。

日々お腹が大きくなっても、息子の死に打ちひしがれていても、全ての物に同等に流れていく時間。

森の中でも室内でも、その正確な、でもゆったりとした時間と、湿り気のある空気感が登場人物達を包み込んで、息吹を与えている。

映画の中でドラマチックな事が起こっても、大きな時間と空気の流れの中で、それは淡々とした日々の中の、自然の摂理のように当たり前の風景に見えてくる。
trailer_DSL.jpg
キャベツを畑から収穫し、土で汚れた手を牛の乳で洗う。

納屋で話す時、お香を焚く女友達の手慣れた仕草。

うなぎをさばく母親の愚痴。

そして刺繍の美しさ!


女性にしか描けない感情と映像がある。
      
クレールを演じるローラ・レマネクのデビュー作は「イブラヒムおじさんとコーランの花たち」。
豊かな赤毛のクリクリパーマ、憂いのある表情が印象的。

映画の中の、グリーンを基調にした親しみやすいファッションがとても可愛くて真似したくなる。
グリーンのモヘアのセーターに少しずつ色味の違う、グリーンのカーディガンコート
ターバンのような巻き方で印象的な帽子、ケトルもグリーン

メリキアン婦人を演じるアリアンヌ・アスカリッド(「マルセイユの恋」でセザール賞受賞)は、黒を基調とした控えめな服装ながら、バックシームのストッキングや、パリ帰りのファッションがドキリとさせる、抑えた色気が美しい。

長編デビュー作の「クレールの刺繍」で、カンヌ国際映画祭批評家週間グランプリを獲得したエレオノール・フォーシェ監督。

この物語は、フォーシェ監督の祖母や母親との関係と思い出、自らの出産体験がきっかけだそう。
淡々としながらも、後からじわっと思いだすような、忘れられない光景が深く心に刻まれたような、ただの映画鑑賞以上の体験を、映像がさせてくれた。

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posted by bakabros at 03:08 | 東京 ☔ | Comment(8) | TrackBack(19) | 外国映画
この記事へのコメント
いつもTBありがとうございます
この映画、いいような、そうでもないような・・
でもこの記事見るとやはりイイのかなぁ
すべてに対しての均等な時間と、その中での変化
フランス映画っぽい映像
たしかに、あとからジワジワくる感じですね
またよろしくお願いします
Posted by zattchi at 2005年08月26日 13:09
このいかにもフランス映画ってのが私はちょっとダメみたいです。
あとフランス語の響きってホワーーーんってかそういうのがダメかも。
私の性格が悪いんだきっと。
Posted by chikat at 2005年08月26日 16:45
zattchiさま。
こちらこそ、いつもありがとうございます!
先日の会場も95%女性でした。
先に観た方から凄く良かった!と聞いていたし、自分も良かったので、皆さんの意見には逆に驚きました。
女性にしかわからない世界かな?とは思いましたが。

chikatさま。
私はフランス映画というよりも、女性監督の描く女の物語という感じで観ました。
今の気分とか、心境とぴたっとはまったのもあるかもしれません。
映画終了直後のもにょもにょしたつぶやき、ざわめきは、「よくわからない」「これで終わり?」という事からきていたのでしょうか。
私はこういうスパッとした終わり方も好きなので満足でした。
Posted by bakabros at 2005年08月26日 17:38
こんばんは。
(女性の作品は時として、感情的すぎたり、感傷的過ぎたりするのですべてを支持はできないのですが、)
本作では、女性のきめ細やかな感性の素晴らしさを大いに堪能できました。
私はその静かな過程で充分に感銘を受けたので、終わり方にも物足りなさはなかったです。
すごーく気に入りました。
Posted by かえる at 2005年09月22日 01:51
かえるさま。

私も凄く好きでした。
女性しかわからない、描けないものってありますよね。それがとても自然に入ってきました。
たまにこういう映画に出合うと幸せを感じます。
Posted by bakabros at 2005年09月22日 07:57
TBありがとうございました
女性というより母という視点からの描き方が、心地よさを生んでいると思いました。
子宮の中のあたたかい羊水に包まれた赤ん坊が感じる安心感。
そういうものに包まれていた温かさとでもいいましょうか…
TBさせていただきますね
Posted by charlotte at 2005年09月23日 23:17
TBとコメントをありがとうございました。
私もこの映画のあっさりとした終わり方がすっきりしていて好きでしたね。
あとクレールや夫人の衣装にも目がいってしまいました。彼女たちの心情があらわれている衣装のように思えました。
Posted by リカ at 2005年09月23日 23:33
charlotteさま。

“母親の子宮の中の温かさ”を考えると、クレールの母親の無関心が余計に悲しくなりますね。
母親とクレールの関係だけはちょっと感情移入出来なかった部分です。

リカさま。

こちらもTB,コメントありがとうございます!
本当に、衣装やインテリアの隅々にまで、クレールや夫人の個性や精神が表されているようでしたね。しっかりと地に足のついた映画という感じで、こういう作品を観ると幸せになります。

Posted by bakabros at 2005年09月24日 23:11
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