2005年05月02日

「真夜中の弥次さん喜多さん」

映画として、多くは期待していなかった。
宮藤官九郎脚本には期待しても、宮藤官九郎作品の映画化には、過度な期待はしない事にしている。

木更津キャッツアイ 日本シリーズ」「ゼブラーマン」などの前例があるので。
この二作は、充分面白く笑えたが、やはりTVドラマ止まりの印象。ドラマとしてならば大層面白く観られるかもしれないが、映画として映画館でお金を払って観ると思うと少し、大分物足りない気がする。

初めから、TVドラマを見に行くつもりで観れば良いのだけれど、映画を観る!という気分で構えて観た途端、色あせてしまうような。TVドラマ以上でも以下でもない、宮藤官九郎脚本。
観る側の気分、モチベーションを必要とする映画というのは、あまりよろしくないとは思いつつ、あえて、ドラマやTV放映を待たずに、映画館でロードショウ公開を観る意義を感じる為に、感じさせて欲しい為、観てみた。

ドラマ的な作品を映画館で観る。これは結構な賭けだ。
TVドラマ的な物を劇場のスクリーンで見せられると途端に嘘くさくなり、スクリーンとのスケールの違いに追いつかずゲンナリする。スクリーンに期待する物の大きさに、TVドラマが太刀打ち出来ないせいだ。

宮藤官九郎脚本をスクリーンで観たのは「ゼブラーマン」だけなので何とも言えないが、例えば「木更津キャッツアイ 日本シリーズ」を映画館で観ていたら? そこそこ笑えたとしても、それは結局TVドラマの延長であってそれ以上でも以下でもなく、映画化する意義が果たしてあったのかと思う。

真夜中の弥次さん喜多さん」に関しても、同じ印象で、多くは期待していなかった。
ただ、原作が好きだった事と、主演の長瀬智也、中村七之助が気になっていて、映画館で観てみるのもいいかも? と珍しく思った。

そして、映画はのっけから笑わせてくれる。
バイクで疾走し、止められ「映画の撮影中で……」と言うシーンには最高に力が抜けて、こちらも脱力! この辺りから、どのようにこの映画を観ればいいのか自分の中でスタンスが出来る。他のギャグもほとんどが脱力系。
哲学的で真理を問いただすようなシーンもあるが、それも宮藤官九郎にかかると全てがただ単に笑える為のネタと化してしまう。
あと、やり過ぎ感とふざけ過ぎ感に今回はついていけなかった。
周りが常にずっと爆笑している状況にも引いてしまった。ずっとにやにやはしていたけれど、声を出して笑える場面はなかった。まあ、映画館で声を出して笑うなんて、今までもあったかわからないけれど。

二人のキスシーンがあると期待していたのに、さらっと流された感じで肩透かし。
もっとディープなやつを観たかった。そういうテイストでもっと行って欲しかったかも。

この映画を観ていて一番強く思ったのは、原作の不条理な、刹那な空気をそのまま描いているようでいて、実際は全く違う物になってしまっているという事。

それは宮藤官九郎脚本、監督なので仕方ない、当たり前の事なのだけれど、それが嬉しいようで、やはりちょっと物足りなく、勿体ない感じ。
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例えば原作の「
弥次喜多 in DEEP」を、他の映画監督が映画化していたら、きっともっとトンデモナイ事になっていたと思う。
だから、多分、これが一番イイ出来!なのだと思う。
この原作を映画化するに当たって、一番の人選だったのだと思う。

それでも、何か足りない、何か違う、と思ってしまうのは、原作の大きさと深さ、面白さに起因するのだろう。

改めて原作をもう一度、深く読んでみようと思う。


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