2008年05月31日

『JOHNEN 定の愛』

時空を超えて繰り返されるめくるめく情愛の絡まり合いは、美しく刺激的。とけ合い一つになる情念と欲望、性愛と本能。斬新な映像感覚でつづる“総天然色ポルノグラフィ”。『JOHNEN 定の愛』
johnen02.jpg昭和11年。軍靴の足音が響く暗い世相の中、外のできごとなどまるで関心がないかのように“二人キリ”の愛欲の世界に拘泥した定と吉。その愛は、男性器切り取りという形で定の手の中に永遠に生き続けることとなる。
世間を震撼させた猟奇殺人“阿部定事件”。
『花と蛇』の杉本彩主演、『鬼火』『恋極道』『皆月』『新・悲しきヒットマン』の望月六郎監督が描く、新時代の阿部サダ。

時空を超えて自在に行ったり来たりするサダと吉蔵の魂。いつどこにいても求め合う二人の、考えられる限りのシチュエーションで繰り広げられるセックスシーンの数々は、扇情的でありながら、どこか乾いていて淡々としています。
観ているうちに、次第にセックスそのものに対する見方や考え方が変化していくようでした。

johnen01.jpg女の情念、欲望、人間の性愛への本能について、深く考えされられる映画です。阿部定の行為は、性愛を貪った怠惰な愛の結果なのか、人間の動物としての本能による崇高な愛のなせる業なのか? という問いかけが、劇中で何度も繰り返されます。
サダと吉蔵の求め合う姿をずっと静観していたサダの夫が、最後にしたこと、それがひとつの答えのような気がしました。

切り取った吉蔵の男性器を「二人の赤ちゃん」というサダの想い。
そして「二人の赤ちゃん」がサダの体を貫いて、産まれてくるもの。
ラストは、それまでの作品のトーンとは変わって、少し意外な感じがしましたが、女としては共感できて、すんなり受け入れられるものでした。
杉本彩さんはこの役柄を演じるのにぴったりで、その肢体は本当に美しくて、うっとりします。「十代の頃から気になっていた」阿部定に激しく共感し、撮影中も彼女と共鳴し合い、代弁者になるようにと演じられたそうです。
私も十代の頃に阿部定事件の映画と、実際の阿部定さんのインタビュー映像を観て、阿部定さんがあまりにも普通の、上品そうな女性だった事に驚きました。でも、一歩踏み越えれば自分も同じ事をするかもしれないとも思いました。女性には誰にでも、愛する男を独占したい、そして亡骸を肌身離さずに持っていたいという気持ちがあるのではないでしょうか。

johnen03.jpg「アヴァンギャルド映画の数々を想起させる尖鋭的な世界観」が衝撃的でとても新鮮でしたが、その元ネタを知らないのが残念です。そんな中でも、白塗り男たちが担ぐ神輿の上でのセックスシーンはとても印象的で面白かったです。

阿部定が惚れ抜く石田吉蔵役に『IZO』の中山一也さん。
謎の老人・サダの夫役の内田裕也さんのオーラあふれる独特の存在感に圧倒されます。
高瀬春奈、江守徹と個性派俳優が脇を固めています。

万華鏡 映画「JOHNEN 定の愛」より 万華鏡 映画「JOHNEN 定の愛」より
杉本彩×阿部定。<肉体で愛を全うした女>阿部定が、<愛に生きる女>杉本彩で甦る。



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posted by bakabros at 22:12 | 東京 🌁 | Comment(2) | TrackBack(1) | 日本映画
この記事へのコメント
こんにちは。

女性ならではの観点によるレビュー、
興味深く拝見させていただきました。

実は、あの神輿のシーンは
ハーフミラー撮影による白塗りの少年たちのコメントが3つ入っていたのですが、
最終的にカットされています。

なかなか現代ではお目にかかれなくなったタイプの映画だけに、
今回はご覧いただけてとても嬉しかったです。
自称・映画案内人、冥利につきます。
今後ともよろしくお願いします。


Posted by えい at 2008年06月01日 11:26
えいさま。こんにちは♪
あの神輿のシーンは衝撃的でした。
他にもカットされたシーンが沢山ありそうな作品ですね。
今までに観た事のない映画で、新鮮な映像体験させて頂きました。
こちらこそ、今後ともどうぞよろしくお願いいたします!
Posted by bakabros at 2008年06月01日 20:11
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『JOHNEN 定の愛』
Excerpt: ----この映画、観たのって 確かずいぶん前だよね。 「うん。最初に噂を聞いたのは 確か去年の末だったかな。 その時の情報では、 望月六郎監督が時空を超えて現れる阿部定を映画化---というもの。 それ..
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Tracked: 2008-05-31 23:10