1972・ミュンヘン・オリンピックで11人のアスリートが殺害された。深い悲しみの中、イスラエル政府が下した決断は、報復だった……。史実に基づいた物語。スティーブン・スピルバーグ
スピルバーグ監督の最高傑作と言われている事もあって結構期待していました。
政治的な内容は少し難しかったのですが、映画としてとても見応えがあり、良かったです。
ただ、これが事実でなければ「面白かった!」とはっきり言えるのに、という感想になってしまいます。
ミュンヘンオリンピックの事件、イスラエル、パレスチナ間の状況、そもそもの争いの発端からして、政治的な問題をよく理解していないので、途中でちょっとついていけない場面もありました。IRAとかEAT? とか、ゲリラや組織の名前がチンプンカンプンで誰がどの組織の人なのかとかわからなくなった事もありましたが、何とか最後までついていきました。

暗殺とその報復。11人殺されて、9人殺し返すだけでは終わらず、報復合戦はエスカレートし、軍隊が介入してくる辺りはもう戦争そのもの。今現在も当時と同じ理由で、世界中のあちこちでこういう闘争、テロ、戦争が起こっているのだという事を思い知らされます。
国家への忠誠、兵士として人を殺す事は殺人にはならないのか。家族を持つ普通の人間としての主人公の葛藤が、そのまま観客へと問いかけられます。
![Munich [Original Motion Picture Soundtrack]](http://images-jp.amazon.com/images/P/B000CEV8Z0.09.MZZZZZZZ.jpg)
映画「ミュンヘン」オリジナル・サウンドトラック
必要最低限に抑えられながらも恐怖と緊張感を演出する ジョン・ウィリアムズ
一番面白かったのは、電話のシーン。展開は予想出来るし、どうやって怖がらせるのか、よくわかっているのに、もの凄くコワイ! リアルな映像と緊迫感を煽る自然な演出に、もう心拍数が上がりまくり。映画を観てこんなにドキドキしたのは「スター・ウォーズ」のオープニングと、「THE JUON」以来? でも期待ではなく、純粋な緊張感からの、これ程の脈拍の急上昇は多分生まれて初めてじゃないかと思いました。
「人が意図的に作ったものを見ているだけで、こんなにも心拍数が上がるんだ」という事実に驚きました。映画って凄い。スピルバーグってやっぱり凄い。
感情を強く揺さぶられるのは、ストーリーが事実に基づいていて、その詳細を知らないせいもありますが、それにしても見事なシーンでした。
あのシーンを見るだけでも鑑賞して良かったし、1800円払ってもいいと思いました。

主演のアブナー役のエリック・バナ
後から政府との連絡役がジェフリー・ラッシュ

標的(ターゲット)は11人―モサド暗殺チームの記録 映画の原作本です。
そして、一番衝撃的だったのは、パレスチナゲリラの首謀者達に報復する暗殺指令を出した当時のイスラエル首相が、女性であったということ。
思想に男女の違いはないこと、全てを首相が1人で決めている訳ではないことはよくわかりますが、それでも、「戦争や殺し合いの命令を下すのはいつも男性側だ」という思い込みがどこかにあったのだと気づきました。
女性には、いつの世も命を産みだし、育み、愛おしむ存在であって欲しいと改めて思い、女性が女性ではいられなくなるような戦乱の世の中にしてはいけないと強く思いました。


スティーブン・スピルバーグ・ストーリー
スピルバーグ監督作品は「E.T.」、「未知との遭遇」、「ジョーズ」、「インディ・ジョーンズ」といった以前の映画が好きです。最近の作品は今ひとつ良いと思えなくて、新作にも期待感が薄れてきていましたが、「ミュンヘン」を観てからまた見る目が変わりました。
「インディ・ジョーンズ4」に期待!