2005年05月20日

「ミリオンダラー・ベイビー」

ヤクルトホール。クリント・イーストウッド監督、主演作「ミリオンダラー・ベイビー」試写会。
アカデミー監督賞、作品賞、主演女優賞、助演男優賞と主要四部門制覇。予告編を見ただけで予想出来てしまうストーリーに、期待はしていなかった。

前半、登場人物三人の人物設定に時間をかけて説明しているけれど、説明しただけで描写されていないので、この三人にあまり魅力を感じる事が出来ないまま、後半へ。

ヒラリー・スワンク演じる31歳から本気でボクシングの道を選ぶ、生まれついての貧乏な女性、マギー・フィッツジェラルド。マギーという女性を、ヒラリー・スワンクは等身大で演じているけれど、この女性が今まで一体何をしていたのか、31歳までアマチュアでリングに立っていたのか? などの細部が伝わってこないので、今ひとつ納得出来ず、共感出来ない。

後半、アクシデントの後から急に唐突にテンポが早くなり、その展開の意外さについていけなくなる。
とんでもない方向へと話は展開して行くのだけれど、その描き方が不十分で、起こった事の大きさとは比例せず、ただ淡々と進んでいく。

映画は全編、肝心な部分も含めて全てをモーガン・フリーマンのナレーションのみで明かされてしまう。
クリント・イーストウッドはいつどの映画でも、演技をしているようには見えない。彼の演技を、モーガン・フリーマンのナレーション、声の演技で補ったという事か。
ぐーっ!と役者の演技で見せるべき所を、全てナレーションで済まされたような感じで、拍子抜けした。

クリント・イーストウッドは、監督のみに徹して、フランキー役を他の役者がやった方が良かったのでは。

ヒラリー・スワンクは、中性的な魅力を最大限に引き出す役柄を楽しそうにイキイキと演じている。
モーガン・フリーマンは、声だけ、視線だけの演技で全てを語る。
フレームの端っこにいるだけで存在感をみせつける。

フランキーとスクラップはオールドマンと呼び合う。
クリント・イーストウッドは、老人の年齢で、しわくちゃだけれど、身体が大きいせいか、老人に見えない。
そして、マギーの役も、もっと若い子の設定での、若さと老いの対立、友情、愛が観たかった。
中途半端な年齢で活躍する女性と、老人に見えない老人との愛、家族的な繋がりは、何か誰かが無理をしているような、奇妙なズレを感じる。

予告編を観た時から、マギーに起こる事は予測していたけれど、アクシデントが起こってからの展開は、もしかしてそっちの方向へ進むのか?と心配した通りのものだった。
この映画のメッセージは、とても難しい問題。
一応それに答えを見せてくれるけれど、その答えに違和感を感じ、納得出来ない。
自己完結を自己満足で見せられているようで引いてしまう。
登場人物の誰にも感情移入出来ないせいか。

唯一良かったのは、止血名人のフランキーが、敢えて出血した頬を殴らせて止血させるシーン。
止血名人(カットマンと言うのか?)のエピソードは面白かった。

あと、あまりにも酷いマギーの家族達。
ちょっとそれはオーバーでしょ! と突っ込みながらも、こういう人達って、実際、現実に結構いそうで、それが逆にリアルで怖かった。
この点だけは、クリント・イーストウッドの描き方に感心した。

比べるのもおかしいけれど、前日に観た「50回目のファースト・キス」が、あまりにも全ての要素において良く出来ていて、楽しめたので、余計にこの映画が色あせて見えて、50回目のファースト・キスが更に素晴らしい映画に思えてしまう。

泣かせる事は、笑わせる事よりも簡単なはず。
でも、クリント・イーストウッドが作曲したあのテーマ曲が色んなアレンジで劇中流れるたびに、「今から良い所!」「泣く所だよ!」と言われているようでかえって冷める。
そして、笑わせる所も痛々しくて全く笑えず、かえって引いてしまった。

笑う事も出来ず、泣く事も出来ない、心は凝り固まったまま、緊張したまま過ぎた2時間13分だった。

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5 painful but a beautiful film!
5 無条件の名作
5 生死の無数にある選択の一つではあるが・・自分だけの生と死を毅然と選ぶ姿を胸に刻みたい


スペースカウボーイ 特別編

クリント・イーストウッド監督・出演作品で唯一面白かった映画。
でもラストに何とも言えないわだかまりが残る。
それがこの監督の魅力なのか??

*その後観た「ダーティファイター 燃えよ鉄拳」が一番面白いイーストウッド作品になりました。



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2005年05月19日

「ウエディング・シンガー


アダム・サンドラー、ドリュー・バリモア共演の98年のヒット作を、「50回目のファースト・キス」を観たばかりのラブコメ熱が冷めないうちに。

まず音楽が良い! これは「50回目のファースト・キス」(公式サイト)を観た時も思ったのだけれど、一番洋楽をよく聴いていた頃(80年代)のポップチューン、ヒットナンバーの数々が次々と流れて、もうそれだけで御機嫌!
50回目のファースト・キス)」はレゲエナンバー中心に、80年代の曲のレゲエカバーやラップバージョンも映画にぴったりだった。

ウェディング・シンガー」では、のっけからデッド・オア・アライブ、カルチャー・クラブでもうノックアウト!
これ誰の何て曲だっけ? と思う暇もない程次々と流れるヒットナンバーに心地よく魅了される100分間。
今まで、ヒット曲をコンセプトなく映画のワンシーンを盛り上げる為だけに使う事に拒否反応があったのだけれど、こういう使い方には納得してしまい、大いに楽しむ。

何より、選曲センスが良い! 思わず飛び跳ねたくなるような、大好きだった曲達。だけど、曲名も歌手名もわからない、思い出せなくてもどかしい。
この映画のサントラが二枚も出ている事からも、映画で使われている曲の良さと多さがわかる。

映画は、98年制作なのに、なぜか舞台設定が85年。
マイケルの赤ジャケットとかマドンナの黒のレースとかルービックキューブが出て来るけれど、それよりもやはり、80年代のヒットナンバーを使いたかったという事なんだろうと思う。
歌手でもあるアダム・サンドラーの歌はあまり上手くないけれど、熱唱系と弾き語りは良い味出している。
そして、あの後ろ髪はわざとだと思うのだけれど、今のイガグリ頭しか見慣れていなかったせいか、登場シーンで、あれ? 何か、もしかしてタイプ!? と思ってしまった。

7年前で若いという事もあるのだろうけど、タレ目とか、締まりの悪い口元とか、ニコラス・ケイジ、アンディ・ガルシア、石井一久に次ぐ好みのタイプかも!? と意外な発見が。
何となく、ベタベタコメディアンだと思って敬遠し、観ず嫌いしてきた事を後悔した。
「50回目のファースト・キス」を観た時も、コメディと言うよりラブストーリーだと思ったけれど、「ウェディング・シンガー」も、コメディと言うよりは真っ当なラブストーリー。
音楽との相乗効果と、アダム・サンドラーが歌手として何曲も披露する事からも、ミュージカルとも評されている。
笑いも、ドタバタ系ではなくて、誰もが自然と頬をほころばせてしまうようなナチュラル系。
他の出演作品を観た事がないのだけれど、同じ笑いのタイプなのだろうか?

始まりの赤ちゃんのおしりとか、おばあちゃんのお尻を触る仕草でもうくすぐられる。
一番好きだったのはリムジンの運転手テストのスラローム。

ああいう馬鹿馬鹿しさをリアルな話の中に入れても浮かないように溶け込ませる脚本と演出力が凄いなあと感心する。

キスシーンなどは、都合良すぎるとも思うけれど、リアルな実感が伝わるので、設定の不自然さもカバーされてしまう。
ドリュー・バリモアは、この頃23歳。少しぽっちゃりしているけれど、今も昔もあまり変わらないキュートさ。

ビリー・アイドルがビリー・アイドル役で出演!
スティーブ・ブシェミはノークレジットで、でも始まりと終わりにとても印象に残る役を怪演。

ここで"TRUE"を歌うのだけれど、この曲が「50回目のファースト・キス」のエンドロールでも使われていて、その時もラップバージョンでカバーされていた為に、誰の曲だったのかわからず終い。
今回もPerformance:Steve Buscemiとしかクレジットされず。
調べて"スパンダー・バレイ"とやっとわかった! すっきりする!

この曲を二人の再共演作でまた使ったのは、「ウェディング・シンガー」との繋がりなのか、よっぽど好きな曲なのかな。

スパンダー・バレイ、トンプソン・ツインズ、カーズ、カジャ・グーグー、ディペッシュ・モードにホール&オーツ! 
これらのヒット曲が聴けるだけで、この映画は観る価値あり。
ストーリーはラブストーリーの王道だけれど、楽しく幸せな気分になれる。
良かったけれど、ストーリーの奥深さを考えると「50回目のファースト・キス」の方が更に面白い。
でも笑わすシーンでは「ウェディング・シンガー」の方が好きかも。

そして、アダム・サンドラーの良さを更に確認し、結構ファンになってるかも!?

カチンコ“50回目のファースト・キスの感想記事”カチンコ



ウェディング・シンガー
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5 最高!!
5 コメディーの向う側に隠れている大事な事
5 80’S好きにはたまらない一本



映画のサントラが、何と二枚のCDに! この映画の音楽の良さがわかります。
ウェディング・シンガー(1)
ザ・プレジデンツ・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ カルチャー・クラブ ポリス スミス ザ・サイケデリック・ファーズ トンプソン・ツインズ
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4 ただのサントラではない!!



ウェディング・シンガー(2)
カジャグーグー カーズ スパンダー・バレエ フロック・オブ・シーガルズ THE B-52’S フライング・リザーズ
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5 80's Best

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2005年05月16日

「50回目のファースト・キス」

ヤマハホール「50回目のファースト・キス」試写会。
映画メモbox”のrabbitpoleと鑑賞。

記憶が一日しかもたない女性と、毎日彼女と恋に落ち、毎日イチからやり直しの恋愛をする彼。主演ドリュー・バリモア、彼女の制作会社「フラワー・フィルムズ」作品。共演アダム・サンドラー。「ウェディング・シンガー」の二人が再共演という事なので、きっと二人の相性が良いのだろうし、何か面白いものが観られそうかな? 軽〜いラブコメだし、とあまり大きな期待はせず観た。

それが、まさか、泣かされるとは!
軽〜いラブコメではあるのだけれど、テーマは重い。
その重いテーマを上手くコミカルにアレンジしていて、終始笑わされるのだけど、笑いながら涙が、ジーンとしながらも笑いが。

登場人物のキャラクター設定がしっかりしていて、皆が愛すべき人達であって、キャスティングが凄く良い。
ハワイが舞台なのだけど(それだけで楽しい気分!)、特に現地のハワイアン達が良かった。メリハリの利いた演技で笑わせた後に、泣かせてくれる。

出て来る人達みんな良い人ばかりと言うのはあるけれど、この映画に関してはそれも気持ちの良いものだった。

ドリュー・バリモアはファニーフェイスだけど、可愛くて魅力的。
笑顔も良いけど、泣き顔の方がグッと来る。
アダム・サンドラーも面白い顔! 

この役は、女性の永遠の憧れかも。
恋人に毎日恋に落ちて貰うよう努力し続ける男性。
今日は女性限定試写会だったので反応は上々で、笑って泣いてしていたけれど、男性の意見も是非聞いてみたい映画。

元々はシアトルの舞台設定だったのが、アダム・サンドラーの提案でハワイになったとか! この映画を観たいと思ってから舞台がハワイと知って更に嬉しくなった。音楽はレゲエ、そしてイルカやセイウチ、ペンギンが一杯出て来る。
それだけでも楽しかった。動物達のCGでない演技は楽しくて幸せ!
50回目のファースト・キス 50回目のファースト・キス ダンスホール・レゲエ、R&B、ポップ系とレゲエベースの音楽が最高♪ さすがアダムたんの主演作!

80年代のヒット曲をレゲエアレンジしたり、劇中にウクレレで弾き語りしたりと、アダム・サンドラーはプラチナアルバムミュージシャンだったのね!
レゲエ好きなので音楽がとても良かったのだけど、サントラは映画を観た人は勿論、観ていない人でも満足出来る、御機嫌な選曲で夏にぴったり!!

ラブコメなのに、面白い! しかも泣けた、誰にでもお勧め出来るような作品は凄く久し振りだった。
初めに出てきたイルカにやられたかな。
動物が躍動する姿を見ると素直になる。あざといのはダメだけど。
会場のみんなと同じ所で笑って泣けるのって楽しい。と、今更ながら思った。

カチンコ二人が98年に共演したラブストーリー“「ウェディング・シンガー」の感想記事”カチンコ

50回目のファースト・キス コレクターズ・エディション 50回目のファースト・キス コレクターズ・エディション
アダム・サンドラー、ドリュー・バリモアが苦手でも、絶対にイケル!(私がそうでした)

ウェディング・シンガー ウェディング・シンガー
アダムとドリューの歴史はここから始まっていた! 最高にキュートでポップなラブコメディ♪

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2005年04月30日

「クローサー」

スペースFS汐留「closer / クローサー」試写会。
ジュリア・ロバーツジュード・ロウナタリー・ポートマンクライヴ・オーウェンマイク・ニコルズ監督。
基はイギリスの舞台劇。映画を観た後に知って、納得
セリフのある役はこの四人だけ。出て来るのは本当に四人だけで、その四人がひたすら話している会話劇だった。

宣伝文に"ロマンティックで甘美な大人の恋愛ドラマ"というあるけれど、"リアルなドロドロ恋愛劇"と言う印象。
見終わって、「なんか思ってたのと全然違かったー」と言う声が聞かれた。
赤裸々なセリフで交わされる愛と嘘、嫉妬、憎しみ

これがこのキャストでなければ、そしてフォトグラファー、小説家、ストリッパー、医師という設定でなければ、まるで「どうなってるの!?」の浮気不倫特集を見ているかと思うような下世話な話。
設定と四人の美しさ、上手さで「映画を観てる」と実感させてくれる。
でも、ジュード・ロウは役のせいか、あまり格好良くは見えなかった。

観賞後に、女性客から「キモイ!」と連発されていたクライブ・オーウェンの方がまだ、役に可愛げがあったし魅力的に見えたけれど。

ジュリア・ロバーツは、本当にファニーフェイス!でも、時々ハッとするほど美しく見える瞬間がある。そして上手いなあと初めて思った。
この役を選ぶあたりにも、役者としての確かな目と余裕を感じた。

ナタリー・ポートマンは、どことなくオードリー・ヘプバーンを連想させる
小さくてキュートで、身体の内側からとてつもないパワーとエネルギーが順次爆発しているような、でも若さだけではない、特別な魅力を感じる。ストリッパーには全然見えなかったけれど、正直な生き方や恋愛に率直な女の子を見事に演じきっていたので、案外本物のストリッパーって、こんな感じかも?なんて思ってしまうほど。彼女の役にはリアリティがあった。

リアリティと言えば、登場人物四人とも、実にリアルに描かれている。
フォトグラファー、小説家、医師という誰からも憧れられるような職業に就いていても、実際は陰口をたたかれ、人の人生を盗み、意義のある仕事をしながらも愛に飢えて人肌のぬくもりを求める。
四人の描き方には誰でもどこかしらに共感出来るだろうと思う。
恋愛観にも。

ただ、あまりにもセリフがストレートで率直すぎるので、恋人と酷い喧嘩別れした直後の人や、甘い恋愛物を見に行こうと期待している人にはヘビー過ぎるかも。

ここまでストレートな喧嘩や別れ話のシーンを映画でも、ドラマでも、今までに観た事がなかったので、そこは他人の一番プライベートな部分をのぞき見しているようでとても興味深かった。「そこまで言うか!」と何度突っ込み入れた事か。
脚本、原作(パトリック・マーバー)は男性だけれど、映画中、何度か男性の涙をみせてくれる
男の涙って、あまり描かれる事がないし、日本ではある意味タブーというか、美徳もあってか、特に恋愛に関して男が泣く姿をドラマでもあまり見た事がない。
男の涙の描かれ方がとても新鮮だった。男でも女でも、泣く時は泣くよなあ、と当たり前の事を見せられて、すっきりする!

そして、恋愛の始まる瞬間と、を言葉で(!?)魅せてくれる。
心の動きを言葉だけで表現しきるセリフは見事で、実際、現実の恋愛の全てが目に見えない物で、言葉でしか通じ合う事も愛し合う事も出来ないのだと痛感させられる。愛が突然生まれるのならば、愛が消えるのもまた突然。
ラストに向かう急展開の中の、妙に説得力のあるセリフとシーンだった。

恋愛で右往左往する四人を観ていると、凄くくだらない気もするし、でも凄く羨ましい気もしてくる
出逢わなければ感じる事もなかった激しい痛みや情熱は、生きる事の糧にもなる。どんなに辛くても、何にもない人生よりはそちらの方がずっと面白そう。
という結論に達したという事は、この映画の思うつぼかも!?


closer / クローサー
closer / クローサー
見終わって、後から何となく思い出し、考えて、「あれ? もしかしていい映画だったかも!?」と思う映画です。観た直後は「もうお腹一杯!」なのに、後から予告編観たりすると凄くドキドキもします。何故なんだろう!?
とにかく主演の4人がしゃべり続ける会話劇なので、英会話の勉強にもいいかもしれません。
恋人達の会話ならではの、独特のスラングが学べるかも??

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2005年04月25日

『キングダム・オブ・ヘブン』

オーランド・ブルームのロード・オブ・ザ・リング後、初主演映画。『キングダム・オブ・ヘブン』
この人、現代劇には出られないのね、くらいの興味しかなかったのだけれど、リドリー・スコット監督と知って、じゃあ観なければという事に。

キングダム・オブ・ヘブン キングダム・オブ・ヘブン (2枚組 プレミアム) キングダム・オブ・ヘブン ディレクターズ・カット
キングダム・オブ・ヘブン
キングダム・オブ・ヘブン (2枚組 プレミアム)
キングダム・オブ・ヘブン ディレクターズ・カット


ストーリー:鍛冶屋のバリアンが突然現れた父親(リーアム・ニーソン)に促され、十字軍と共にエルサレムまでの旅をし、父の意志を継ぎ天国の王国"キングダム・オブ・ヘブン"を現実の物にするべく理想郷を追い求め闘い続ける。

kingdom.jpg十字軍とか、エルサレムとか、根本的な所をきちんと理解していないので、新しい登場人物とか言葉が出て来るとすぐにわからなくなってしまう。
歴史を知らないので、どこまでが事実に基づいているのか、全くのフィクションなのかよくわからない。
歴史をよく知っていたり、好きな人なら大層楽しめるのだろうなあ、とずっと思っていた。

ストーリーは、キリスト教対イスラム教のエルサレムを争う闘いなので、どうしても現実の宗教戦争に思いが及ぶ。
しかし、理想郷などの描き方と思想が曖昧な事もあり、あくまでも映画の中の事として観ていたが、終盤ではっきりと主人公にこの戦争の意味と無意味さ、何のために闘うのか、殺し合うのか、その理由と未来に向けてのメッセージを語らせる。

このセリフは、映画の中のものでも、そのまま監督のメッセージとして受け取った。その思いを受け取るために、2時間30分近く血生臭い闘いを見せられたのかと思うと何とも言えない気分になる。
"戦いではなく平和、憎しみではなく愛"が満ちあふれた理想の世界"キングダム・オブ・ヘブン"。
この映画を観てバリアンの意志を継ぐものが現れるだろうか。
この映画が”娯楽”大作として終わってしまう事が一番恐ろしい事だと思う。

kingdom02jpg.jpgリーアム・ニーソンは、100人の兵を束ねる大将に相応しく見えたが、オーランド・ブルームは鍛冶屋にも騎士にも見えない。
初めのうちは、まだヒヨっ子という事で、きっと成長して最後には騎士として、王として相応しい顔つきになり、仕草とオーラになるのだろう、と期待して観ていたが、最後まで一本調子で、初めに出てきたオーランド・ブルームのままだった。 

という事なので、会場の2/3以上は居たであろうと思われる、「ロード・オブ・ザ・リング」のレゴラス役、オーランド・ブルームファンの女の子達の基本的な期待、「オーリーの美しい顔が見られればそれでいい」(と観る前に本当にそのまま女の子が言っていた)にはまあ何とか応えられた模様。
見終わって、「まあ、オーランドは格好良かったね。まあね」と言っていたので。("まあ"、と言う所がこの映画をよく表している)

闘いのシーンの細部まで見せてくれるリアルさ、迫力はもの凄い。
城壁を挟んでの攻防はとても細かく徹底したリアルさで、今まで観た戦争映画の中でも一番面白かったかもしれない。

ただ、ハイスピードカメラの映像が観づらくてたまらない。
チカチカして目が追いつかない。途中から無理して目で追う事を止めた。
戦闘シーンではみんな鼻やアゴまで鎧カブトを被るので、目しか見えないので誰が誰やら。
ああ、これきっと前に出てきた誰かなんだろうな、と推測するしか出来ない。

あのハイスピードカメラ、ストップモーションを美しく見せる為の物らしいけれど、普通のスピードで見せる時にも、美しい映像で見せられるような技術が早く開発されないのだろうか?
撮ってる人、あの画面ちゃんと見えてるのかな?
ストップモーションの為だけにやってるとしたら、それ以外の映像を犠牲にしている、そこまでする利点が本当にあるのだろうか??

キャストでは、リーアム・ニーソンとジェレミー・アイアンズと共にもの凄く地味で渋い役、演技を魅せてくれるのがエドワード・ノートン。

kingdom01.jpg観る前にどこかのサイトで黄金の仮面写真に”エドワード・ノートン”と書いてあったのを見て目を疑ったのだけれど、本当にマスクのままだった!
驚いたけれど、エドワード・ノートン以外の役者だったら、余計にハラハラしたと思う。いつ顔が出るのか、出ないのか!? と。
エドワード・ノートンなら、最後まで顔出し無しでもあり得るなと納得してしまう。目だけで(しかも見えづらい)、マスク越しの声だけの演技って凄い!
でも、仕草やオーラは素晴らしくエルサレムの王のもの。

オーリーよりも脇の役者が皆素晴らしく、とても光っていた。


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2005年04月21日

「さよなら、さよならハリウッド」

よみうりホール。ウッディ・アレン三年ぶりの新作「さよなら、さよならハリウッド」試写会。
ウッディ・アレンの映画は、大感動とか、爆笑する程の面白さなどは期待できないけれど、全くつまらないとか、笑えないという心配もない。いつも無難に楽しめる。
始まりから、超早口なセリフの応酬なので、少し戸惑うけれど、すぐにウッディ・アレン演じるウッディ・アレンに引き込まれていく。

さよなら、さよならハリウッド
日活 (2005/11/11)
売り上げランキング: 19066
おすすめ度の平均: 4.0
4 あーだこーだ言うまい、この職人芸を見よ!
4 【最近見始めた この監督作品】
4 私は最後のオチが好きだな〜


かつて二度のアカデミー賞を獲っていながら、落ちぶれて神経症気味の映画監督。
そんな彼にハリウッド超大作のオファーが来たが、依頼主は彼を捨てた元妻と、制作スタジオ重役である彼女の今の男。果たして映画は無事に完成するのか??

会話劇で、シニカルな笑いやベタなコメディを楽しむ映画なので、ストーリーを知っていても十分に楽しめると思うけれど、観る前にチラシとか、予告編、公式サイトなどはあまり目に入れない方がもっと楽しめると思う。
公式サイトでは結構なネタバレをしているので、観る前に見ないで良かったと思った。

爆笑するほどの面白さはないと書いたけれど、試写会場では結構な爆笑が巻き起こっていた。
私は終始、“クスッ!ニヤッ!”とはしていたけれど、周りの爆笑ぶりにはついていけなくてちょっと戸惑った。
だって、セリフの前に字幕で会場全体が大爆笑して、その笑い声でセリフが聞こえない!なんて事が何度かあったのだ。

これって凄い事だと思う。普段映画館で若い男性の大きな笑い声なんて滅多に聞かないので不思議な感じだった。
シーンの繋ぎや状況、ウッディ・アレンの動きだけで笑いが起こるというのは。もはや言葉を越えた映画だ。

ウッディ・アレンの神経過敏でいつも悩んで愚痴を言っているキャラクターが嫌いでなかったら、誰でも楽しめると思う。
ウッディ・アレンって、存在が面白い。あんなにちっちゃくて、結構な年で、皮肉屋で、悲観的な男が、なぜあんなに女にもてるのだろう??といつも彼の映画を観ながら思う。でも最後には彼の魅力にすっかり引き込まれ、カワイイ奴!に見えてくる。

何にも残らないような気がして、でも見終わった後は何故か気分良く、楽しく、鼻歌かスキップなんかしたくなるような。
人間のダメさとか、愚かさ、悲しさ、つまらなさを全て愛おしい物に変えて魅せてくれる

見終わった後、チラシの手の動きと、タイトルの意味がわかり、またニヤッとさせられた。

ウッディ・アレンの脚本、出演作では彼の映画デビュー作「何かいいことないか子猫チャン」が大好き! 

この映画のDVDが出ていないなんてexclamation&questionと思っていたら、やっと出してくれました!
何かいいことないか子猫チャン 何かいいことないか子猫チャン
コメディ、ラブコメディ、お色気コメディを語る前に、是非ご覧あれるんるん

今年で70歳になるけれど、いつまでも変わり映えのしない映画を撮り続けて欲しい、貴重な映画監督です。

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