ヤマハホール。映画メモboxのrabbitpoleと鑑賞。
予告を観た時点でストーリーが読めてしまい、プラス子供を主人公にした泣かせ物という印象だったので、あまり期待していなかった。見終わった感想は、ほぼその期待通り。ただ、可哀想な子供達の感動作というよりは、寄宿舎の先生と子供達の心温まる触れ合いという感じ。泣かせようとした作りはしていなかったのでそれは嬉しい期待外れだった。

逆に、笑わせようとする場面がとても多いけれど、どれも単純な笑いで、子供の可愛さとおじさん(ジェラール・ジュニョ)の顔(本当におじさん!という感じなのであえて)に素直にクスッと微笑んでしまう。
クスッ。綺麗な歌声! クスクスッ。歌声! という感じ。
ただ、思ったよりも曲自体を聴かせる合唱の場面が少なくて、物足りなかった。
もっと展開して行きそうな、拡げられそうなドラマをどれも簡単に済ませてしまっているのが勿体ない気がした。
まず、音楽で挫折した先生の人生が見えてこない事。(なくてもいいけど、あった方が奥行きが出ると思う)

映画の合唱を担当した合唱団のリサイタル。
実際に「サン・マルク少年少女合唱団」のソリストでもあるジャン=バティスト・モニエ演じるモランジェ少年が、学校一の問題児と言う程の事もない。
赴任早々子供達のイタズラに遭遇するも、実際ケガをしたのは用務員。
おじさん(先生)がされるのはせいぜい鞄を盗まれたりする大した事もないイタズラで、大変な事件に実際巻きこまれるのはいつも周りの人達。
そして簡単に子供達を手なずけていく。(そこは先生の人間性とか信頼感とかなのだろうけど、あまり見えてこない)
最初から最後まで傍観者的な立場で、子供達と強く心がぶつかるような葛藤がないため、それを克服した喜びも感じる事がない。
一番気になったのは、やっと出てきたホンモノの不良モンダンとの葛藤があるのかと期待するも、あれっという間に消えてしまって、その消え方も説明不足で後味が悪い。彼は実際に青少年更生施設に入っている少年だそうだけど(いい顔してる!)、例え悪役にも愛情を持って最後まできちんと描いてあげて欲しかった。
ジャン=バティスト・モニエのモランジェ役の描き方も、奇跡の歌声を引っ張り聴かせない理由が少しわざとらしく芸がないので、例えば、“実は父親が歌手で、父親譲りの歌声を聞くと母親が悲しむ為、歌う事を自ら封印してきた”などの設定があれば、もっと感情移入し、すんなりとストーリーに入って行けたと思う。
全体的にこぢんまりとまとめられ、大きな破綻もない代わりに、強く心に残るような場面はなかった。
感動を期待して行くとそうなりそうなので、「純粋な子供達の顔が見たいな、歌が聴きたいな」という気分で観たら結構面白く観られるかもしれない。
決してそんなにつまらなくはないのだけれど、エピソードの作り方をもう少し工夫したら、もっと素晴らしい映画になっていたような気がすごくするのだ。
おじさん(ジェラール・ジュニョ)の面白い顔とジャン=バティスト・モニエ少年の美しい顔、歌声だけでも充分に映画を堪能出来るし、全体としては良く出来ていて楽しめる。
モニエ少年、本当に美しい! そこにいるだけで画になるのだけれど、歌う姿はもっと美しい。

映画「コーラス」のサントラをサンマルク少年少女合唱団が歌い上げるコンサートライブのDVD。少し成長したジャン=バティスト・モニエ君の歌う姿が観られます。
一番小さな可愛いペピノ、マクサンス・ペランは、制作出演のジャック・ペランと同じ性で、監督クリストフ・バラティエはそのジャック・ペランの甥という事なので、監督の息子かと思いきや、ジャック・ペランの息子だった!
一緒に観たrabbitpoleの「コーラス」の記事。とても素敵な文章です。お口直しにどうそ!