2005年06月22日

「埋もれ木」

新宿安田生命ホール「埋もれ木」試写会。映画の前に小栗康平監督と立松和平氏のトークショウがありました。
立松和平氏の発する言葉がとても自然で力の抜けて、あのイントネーションと共に何とも言えないおかしみを醸し出して、2人のトークに会場は非常に盛り上がっていました。

映画の内容には触れないという約束で、“夢”を描いた作品であるという事だけをトークの題材にしていたのだけれど、2人の話すひと言ひと言が非常に深く真理を突いていて、考えさせられる内容で、この話を聞けた事が素晴らしい体験で、とても価値のある時間になりました。

例えば小栗康平監督の映画はカット数が少ないという事。
どうしてそうなるのか、そうする事の意義と、それから生まれてくる事とは。
引きの画が多い事。
その意味と、その画から感じる事。拡がる世界。

監督は、自分の映画が、押しつけがましくなく、画面に余韻を持たせ、観客一人一人に感じるままに考えさせる事を究極的な理想としているように思えました。

小栗康平監督作品を初めて観ました。
シーンの多くは、とても引いた画から始まり、人物に寄って行っても、最高でバストアップまで。それもバストアップになった場面は、浅野忠信、岸部一徳、夏蓮の三人だけで、多分全部でも3、4回しかなかったと思います。

引きの画と、自然光と普通の室内照明の為か人物が暗くて遠いので、ほとんど他のキャストの顔はよく見えません。
最後の方まで、平田満が初めの方から何度も出ていた事を気づきませんでした。
エンディングロールで特別出演の松坂慶子の文字を見て、ほとんど全員が「一体どこに出ていたの?」と思ったのではないでしょうか?
その他にも、主要キャスト以外に、驚くような人がわずかなシーンに出演しています。

そういった引きの画に、前のシーンからのセリフや、画に映っていない人物のセリフが被ってきます。
「この感じは、一体なんだろう?」と観ながら考えていました。
監督は「ファンタジー映画」と何度も話していたが、もの凄くリアル過ぎて、逆にそれがファンタジーに思えてくるような感じ

例えば、そばに居る人達が話している事を、何とはなしに聞いている時。
自分にとって重要な事柄や、直接関わってくるような事なら、聞き耳を立てて、話に入って行くだろうし、全く興味のない事柄なら、相づちしながらも聞き流している。
そんな雰囲気が、ずっと続きます。

ほとんど意味のないセリフを、顔の見えない役者達が、ただ話している。
それが、とてもリアルで、その繰り返しに次第にファンタジーを感じ始めます。

実際ファンタジーっぽい映像も出て来ますが、そのシーンが逆にとてもリアルに感じて、リアルな会話やシーンの中に、ファンタジーを観る感じ。

私達の現実の日常の中でも、リアルとファンタジーは意外に表裏一体で、いつ、どこでも何かのはずみでどちらにでも転ぶ事が出来るのだとはっきりと気づかされる、刺激的な映画でした。
小栗康平監督作品集 DVD-BOX 小栗康平監督作品集 DVD-BOX

映画を見る眼 見ること、在ること
NHK人間講座「映画を見る眼~映像の文体を考える」のテキストをもとに加筆。映画を見る眼 
10年間に綴られた物をまとめたエッセイ集。見ること、在ること









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2005年05月02日

「真夜中の弥次さん喜多さん」

映画として、多くは期待していなかった。
宮藤官九郎脚本には期待しても、宮藤官九郎作品の映画化には、過度な期待はしない事にしている。

木更津キャッツアイ 日本シリーズ」「ゼブラーマン」などの前例があるので。
この二作は、充分面白く笑えたが、やはりTVドラマ止まりの印象。ドラマとしてならば大層面白く観られるかもしれないが、映画として映画館でお金を払って観ると思うと少し、大分物足りない気がする。

初めから、TVドラマを見に行くつもりで観れば良いのだけれど、映画を観る!という気分で構えて観た途端、色あせてしまうような。TVドラマ以上でも以下でもない、宮藤官九郎脚本。
観る側の気分、モチベーションを必要とする映画というのは、あまりよろしくないとは思いつつ、あえて、ドラマやTV放映を待たずに、映画館でロードショウ公開を観る意義を感じる為に、感じさせて欲しい為、観てみた。

ドラマ的な作品を映画館で観る。これは結構な賭けだ。
TVドラマ的な物を劇場のスクリーンで見せられると途端に嘘くさくなり、スクリーンとのスケールの違いに追いつかずゲンナリする。スクリーンに期待する物の大きさに、TVドラマが太刀打ち出来ないせいだ。

宮藤官九郎脚本をスクリーンで観たのは「ゼブラーマン」だけなので何とも言えないが、例えば「木更津キャッツアイ 日本シリーズ」を映画館で観ていたら? そこそこ笑えたとしても、それは結局TVドラマの延長であってそれ以上でも以下でもなく、映画化する意義が果たしてあったのかと思う。

真夜中の弥次さん喜多さん」に関しても、同じ印象で、多くは期待していなかった。
ただ、原作が好きだった事と、主演の長瀬智也、中村七之助が気になっていて、映画館で観てみるのもいいかも? と珍しく思った。

そして、映画はのっけから笑わせてくれる。
バイクで疾走し、止められ「映画の撮影中で……」と言うシーンには最高に力が抜けて、こちらも脱力! この辺りから、どのようにこの映画を観ればいいのか自分の中でスタンスが出来る。他のギャグもほとんどが脱力系。
哲学的で真理を問いただすようなシーンもあるが、それも宮藤官九郎にかかると全てがただ単に笑える為のネタと化してしまう。
あと、やり過ぎ感とふざけ過ぎ感に今回はついていけなかった。
周りが常にずっと爆笑している状況にも引いてしまった。ずっとにやにやはしていたけれど、声を出して笑える場面はなかった。まあ、映画館で声を出して笑うなんて、今までもあったかわからないけれど。

二人のキスシーンがあると期待していたのに、さらっと流された感じで肩透かし。
もっとディープなやつを観たかった。そういうテイストでもっと行って欲しかったかも。

この映画を観ていて一番強く思ったのは、原作の不条理な、刹那な空気をそのまま描いているようでいて、実際は全く違う物になってしまっているという事。

それは宮藤官九郎脚本、監督なので仕方ない、当たり前の事なのだけれど、それが嬉しいようで、やはりちょっと物足りなく、勿体ない感じ。
弥次喜多 in DEEP 廉価版 (1)
例えば原作の「
弥次喜多 in DEEP」を、他の映画監督が映画化していたら、きっともっとトンデモナイ事になっていたと思う。
だから、多分、これが一番イイ出来!なのだと思う。
この原作を映画化するに当たって、一番の人選だったのだと思う。

それでも、何か足りない、何か違う、と思ってしまうのは、原作の大きさと深さ、面白さに起因するのだろう。

改めて原作をもう一度、深く読んでみようと思う。


真夜中の弥次さん喜多さんでおなじみヒゲのおいらん

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2005年04月12日

「阿修羅城の瞳」和製「コンスタンティン」!?

ヤマハホール。劇団☆新感線と松竹のコラボレイト舞台を映画化した「阿修羅城の瞳」。
舞台の段階から松竹とコラボレイトしていたと言う事は、まず映画化ありきの企画だったのだろうけれど、映画を観た感想は、お芝居と歌舞伎、映画のいいとこ取りして訳わからなくなってしまった! という感じ。

阿修羅城の瞳 阿修羅城の瞳

劇中で市川染五郎が歌舞伎を演じる様にもろに歌舞伎的であったり、お芝居のセリフ、呼吸と思うシーンがあったり、それらを映画の中に詰め込んで、そこへ「英雄 ~HERO~ 」や「LOVERS」の戦いの中の愛とかワイヤーアクションとチャンバラ、VFXに特殊メイク、CGと舞台衣装やセットのような絢爛豪華な江戸絵巻。
そういう映画だった。

まず最初の鬼との戦いのシーン。いかにも安っぽい鬼のCG表現と、蛍光緑の血。
わざとやっているんだろうけれど、もう少し上手くCGを使えなかったのか、あまりにも酷くてのっけから引いてしまった。
お金かけて作られたのだろうに、Vシネマのような雰囲気で、宮沢りえのおきゃんな可愛さとか、市川染五郎の決めセリフや身のこなしの美しさが台無し。
頑張って良い所を見つけよう観ていたが、段々まともに観るに耐えられなくなり、途中からはトンデモ映画として楽しんだ

そんな中でも宮沢りえと市川染五郎二人のシーン、それぞれ一人ずつのシーンは良くて、この奇想天外な映画の中でもさすがに画になる
そこへ内藤剛志、樋口可南子などが入ってくると、映画が急にどこかで見たような手垢にまみれた画になってしまう。
渡部篤郎はいつもの過剰演技もこの映画にははまっていて、浮かずに役に合っていると初めて思ったけれど。
市川染五郎が鏡の前で髪に櫛を入れるシーン、美しい!


途中まではそれでも何とか持っていたが、宮沢りえが阿修羅になったあたりから、どうしようもなくトンデモな空気があふれ出してきて、もう真面目に見ている事が出来なくなってきて、トンデモだなあと思いながらプププッと笑いそうになっていた。
阿修羅城の瞳 映画版(2005) & 舞台版(2003) ツインパック 阿修羅城の瞳 映画版(2005) & 舞台版(2003) ツインパック
舞台版と映画版のセットパック、珍しいですね!

きっと、舞台を見たら面白いんだろうなあ、とは思って、舞台版が観てみたくなった。
映画にしてみたものの、方向を少しまちがってしまったような。

観たばかりの「コンスタンティン」と設定が似ていたのでどうしても比べてしまう。設定しか比べられなかったけれど。
鬼御門=エクソシスト、人間の姿をした鬼=ハーフブリード、恋をした女が転生して阿修羅王に=悪魔が人間界へ女から産まれるとか。
そういう風に観てみると、。。やっぱり余計に面白くないかも。

公式サイトは凝っていて、毬から裏サイトへ入れ、逆さまの世界が楽しめる。
観る前に用語集を観ておくとより映画を楽しめるかも??

「コンスタンティン」の感想記事 カチンコ「コンスタンティン」=コンスタンティヌス!?カチンコ

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2005年03月31日

「隣人13号」モンスター中村獅童

隣人13号」がそろそろ公開らしく、TVCMが始まった。
大分前に観たけれど、いつだったかと調べてみたら、2004年の8月5日!
随分前に試写会して、リサーチに時間をかけたんだなと感心した。
映画は、メール当選したスニークブレビュー(覆面試写会)。
普通スニークブレビューと言っても、ヒントや公開日時が匂わせてあったりして、大体調べれば何の映画かわかるものが多い。
しかし、この時は本当に何の情報もなく、会場入りして、実際にフィルムが回り始めてもまだ、わからない!という状況だった。会場入りすれば、ポスターとか貼ってあったり、チラシの中に入っていたりするかな? 何て思っていたけれど、どれもなし。
隣人13号 隣人13号DVD

私はホラー映画がダメで、予告も見られないほど恐がりだから、「もしホラーだったらどうしよう!」と本気で心配していた。
映画上映後、15分程度のアンケートに答える事が条件になっていたのだけれど、もし本当にホラー映画だったら、「申し訳ないけれど、観られません!」と断って、早々に退場する心づもりまでしていた。そして・・・。

映画の始まりがすごくホラーかスプラッターっぽかったから本気でビビッた!でもタイトルが出て、そのタイトルの原作漫画と、近々映画化される事を何となく知っていたからちょっと興味も出たし、ホッとした。

原作は井上三太の「隣人13号」。それまで井上三太作品を読んだ事はなかったし、松本大洋のいとこで、画風と雰囲気が似ているという位しか知識がなかった。家族が好きで、帰ったら家に原作があった。
スニークプレビューは女性がほとんどだったから、きっとターゲットは女性だったのだろうと思う。何故? という気もする。観た限り、およそ女性向けでないから。だからこそ、女性の意見を聞きたかったのだろうけれど。

隣人13号 1 (1) 隣人13号 1 (1)

映画は小学校時代のいじめから凶暴な人格と二重人格になり、復讐するようになる男の話。
元の人格を小栗旬が、凶暴な人格を中村獅童が演じる。二人一役という難しい役を、違和感なく見せるのはCM、ミュージックビデオ等のディレクターで、今作が初映画となる井上靖雄監督の手腕によるものだと思う。

不快感をあおる映像と演出で、全編嫌な気分にさせられたけど、結末がどうなるのかと引っ張る力はあったのと、ラストが思っていたのとは大分違うイメージに展開していったのと、それが救いか。

中村獅童が怪演していた。今までクセが強いだけだと思っていたけれど、とても上手かった。
普通に演技出来るのね、と思ったけど、普通じゃない役だから、はまるのかな。
この映画の二日前に観た「モンスター」のシャーリーズ・セロンとても近いものがあった。
モンスター 通常版

シャーリーズ・セロンも、上手いなあ、とは思っても、どの役も違和感があってあまり好きではなかったけれど「モンスター」は怪演だった。
「モンスター」の演技と容姿を観て、今までの違和感は彼女の美しさによる物だったのか、と思った。
ここまで醜くしないと演技力が表に現れない程の美しさ、と言えるのか、スタイル良くて背も高いし、普通の俳優と絡んでも何か釣り合わない気がしてどうも居心地が悪い感じ。
「モンスター」ではそこを逆に活かして、体の大きさも威圧感となって凄まじかった。
「隣人13号」の中村獅童は、登場シーンから、しばらくするまで、彼と似ているなと思ったけれど、確信が持てなかった。
特殊メイクをしている事を抜かしても、それほど彼の演技力が凄まじく、本物の変態にしか見えなかったから。
「これ、誰!?」と思っていて、それが中村獅童だと気づいた時には、驚きと共に爽快感すら感じた程。やってくれるよな!と。

そして、「モンスター」のシャーリーズ・セロン同様、あそこまで醜くしなければ表に現れてこない演技力という物もあるのかなという結論に達した。

内容、見せ方や映像が結構、相当にエグいので、途中で席を立つ女性がいるかと思ったけれど、最後まで誰も退席しなかった。

「モンスター」試写会では途中退席するカップルがいたけれど、私から観るとこちらの方が耐えられない人がいそうな気がする。

物語がいじめ問題に深く関わるものなので、多くの人に観て欲しい気もするけれど、暴力描写の激しさは結構なものがあるから、誰にでもと勧められる映画ではない。
それとも、「いじめとはこれほど残虐なことなのだ」と、そういう観点で観れば問題の深刻さを受け止める助けになるのか?

今、実際にいじめられている人やいじめている人、過去にいじめられてきた人、いじめてきた人は、この映画を観ようと思うのだろうか。

色んな意味で、本当のスニークブレビューはとても意義のある、観る側に価値のある上映方法だと改めて感じた。

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posted by bakabros at 04:39 | 東京 ☀ | Comment(2) | TrackBack(9) | 日本映画
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